お侍様 小劇場 〜枝番

    “檻の中” (お侍 番外編 84)
 


それと匂わすようなことは、何も仰せにならぬまま。
いつも通りのお出掛けの仕儀の末に、
それは短く一言だけ、


  ―― 今宵は、待つな


たとえば、そのように。
背中を向けたまま、
突き放すようにお告げになることも、
決して珍しくはないのが、お務めへの出立で。
そうそう容易く、無事にはお戻りになれぬよな、
苛酷な務めへ いつ発たれるやも知れぬ。
そんな立場の御方様なればこそ、
待つと決めたこちらにも、
それ相応の覚悟はあって。

  ―― 諦めないし、
     それへと後悔もしない、と

こんな心根 知られたら、
御主はどんなお顔をされるのだろか……。





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  *ちょこっと時間ぎれ、もちょっと続きます。
   つか、次が本題ですが、どか お待ちを。


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